学校カースト

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「「・・・・・・」」
 ほとんど会話を交わすことなく、僕等はクラブハウスに着いた。
 はぁー、と深いため息を紅平は吐く。ここに入ったら、また博人は『人気者』として頑張らなければならない。
「頑張ってね、人気者くん」
「嫌みか?」
「嫉みだよ」
 僕の言葉を鼻で笑って、紅平はクラブハウスのドアを開いた。
「わ~! 紅平くんだ!」「おぉ! 紅平! こっちこっち!」「え? 紅平来た?」「紅平くぅ~ん!」
 いろんな声に迎えらて、紅平は奥の方へと入って行った。学校カースト的に『上』の人達の中へ。

天と地ほどの差

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「分かってるじゃない! そうそう、これこれ!」
 和奏が一番好きなスポドリだ。言いながらキャップを回して栓を開け、ごくごく喉を鳴らして飲む。
「美味しー!」
 のだそうだ。その様子を見て、茜がクスクス笑っていた。俺もつられて笑って、
「はい。茜」
 と、茜の好きなお茶を取り出す。
「ありがとうございます」
 和奏とは違って、両手で丁寧に受け取って、お礼まで言ってくれた。同じ人間だと言うのに、天と地ほどの差がある。
 俺は、自分の分の一.五リットルのりんごジュースをがぶ飲みした。

護衛

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 どぉおおおん!
 と言う音と同時に、餓鬼が一体消える。
 残り二体!
「[餓鬼]!」
 と[餓鬼]を一体に組み掛からせて、その間に空き缶を残りの一体にぶつける。
「ほーらよっと!」
 直立した缶の上を踏む。これで手下二体目!
 そして――[餓鬼]が押さえ込んでいる一体にもぶつけて、その缶を踏む。これで三体。
「お前、この人守ってろ!」
 と、三体中の一体を護衛に付ける。「大丈夫ですよ。こいつは人間を攻撃しません」と男性に説明して。聞いているか分かんないけど・・・・・・。――次は?

水智の眼

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「そうですか」

 と、水智が話し終わるまで、眼を逸らさずに、水智の眼をじっと見つめていた茜が、少しだけ眼を落とす。

 そして、俺に眼を合わせて、言う。

「拓くん。『退治』して下さい」

 静かに、はっきりと、でも、強く茜は言った。

「なんで!」

 ずっと黙って聞いていた、聞きながら地面を革靴で抉っていた和奏の声が、茜の声に被さった。

「なんで、『退治』すんの?『霊化』でいいじゃん!別に、殺す必要ないでしょ!」

 それじゃ可哀想すぎる、と和奏は言った。

 綺麗な顔をぐちゃぐちゃに歪めて。

人間側の都合

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「旨い。あそこのプリンは、人間にしては上出来だ」
 勝手だ。神様は勝手だ。人間を作った癖に、人間に期待していなかったり、ドラマの主人公なんてなりたいと思っていない人間に、主人公になるような力を与えたり。好き勝手やって、少しずつ人を苦しめる。
 本当の自分探しとか、居場所を探すとか、自己啓発とか、スキルアップとか、ああいうことをしている意識の高い人達に、是非とも召喚師の能力を差し上げたいものですよ。
 まぁ、そんな人間側の都合は関係なく、神様は俺等を作り、生きさせる。

この塾の敷居

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 この塾の敷居は高かったかもしれないけど、ハードルよりは低かったんだろうな。
 そうアラサーは話を締めくくった。家の敷居がハードルくらいだったら、ますます家から出たくなくなるな、なんて考えながら、僕は首肯する。まあ、入りにくくなったせいで、入ることについて考えたんだからそういう風にも捉えられるか。だから、「そうかもしれませんね」
と言って、「すみません。遅れまして」と一応、謝罪しておく。カウンターの奥の壁に掛かっている連続秒針のアナログ時計を見ると、もう18:42だった。

酷い両親

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「酷い両親だ、といつも祖父母は言います。酷い娘で悪かった、と。婿も冷たい奴だった、と。でも、あたしには良い両親だという印象しかない」
 あたしは、自分の父や母を悪く言う祖父母が好きになれない。とても大切にして、両親以上に愛してくれているのに・・・。その上、あたしを置いていった父と母に、あんたらが早く夢を実現させないからこうなるんだ、と八つ当たりしてしまっている。
「愛してくれるけど、両親を認めてくれない祖父母、あたしを祖父母に預けてまで夢を追い掛けているのに、まだ何の成果の報告もない両親・・・」

ケーキ

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「あんた、そんなにそのケーキが食べたかったの?」「ちげぇよ」「じゃあ、何であんなに必死に買おうとしたの?」「自分のためならあんなに必死になって買おうとしねえよ」レア物の残りが一つなら「触れない」が最善策だろうが、となるべく大きな声で、周りの冷たい視線の温度を上げるために聞かせる様に言った。「これは、罰ゲームの景品みたいなもんだ。純夏と呼春が食べたいって言うから、買いに来たんだよ」ったく、一つは買えて良かったよ」と言って締めくくる。

綺麗であること

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なんで、自室を掃除するのか?ずっと僕は納得出来ない。幼少の頃より、両親に自室を掃除しろとずっと言われてきた。また直ぐに汚くなる運命なのにだ。

幼稚園とかでも、汚したらちゃんと清掃しろ、と教え込まれる。どうしてなんだろ?服だって、上着ならまだしも、下着まで畳むような奴もいるものだ。

誰もお前の下着なんか見てるわけないと伝えてあげたくなる時がある。自分だけがいる自分の部屋、誰にも見られない下着。そんなものを掃除するのが重要なのか?

真剣に迷う人

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口にするものを真剣に迷う人。そんな人は本当に多い。今日の夕食は何にしようか。どんな人でも、スーパーや飲食店街でそんなことに悩む。それでも、と飛鳥先生は言う。殆ど見ないんだよ。口にする言に悩む人って。ひとつひとつ考えながらしゃべる人っていないじゃない?何気なく、思いついたことを口にして。それなのに、そんな薄っぺらい言葉に一喜一憂して。

そうやって、私たちの会話って流れていくよね?その流れに乗らないように無理するとさ。どうしても、ベッポみたいになっちゃうんだよね。ベッポ?それ、何のことですか?そう、僕は飛鳥先生に尋ねた。読んだことないの?モモ。ああ、あのベッポね。モモの親友として描かれるおじいさん。不注意な発言が、全ての災いの元である。彼はそう信じている老人だ。

そして、正しいと思う結論が出るまで何時間も考えてからしか発言しない。相手が何を尋ねたのか忘れた頃に答えるから。あのおじいさんは頭がオカシイに違いない。そう、多くの村人に思われ、蔑まれる。そんなおじいさんだ。人間って、喋り過ぎだと私は思うよ。だから、発言をしっかり考える時間がない。だから、薄っぺらい言葉しか口にできない。だから、酷いことを言っちゃう。そう、思うんだけどね?飛鳥先生はそう言った。